このところ、国内ではデビットカードでの決済件数が増加傾向にあります。TVCMや雑誌など、メディアへの広告掲載に積極的な企業もあり、デビットカードに改めて注目が集まりつつあります。

本コラムでは、そんなデビットカードの歴史や種類、利用者数が増加している背景について解説していきます。

誰でも気軽に保有できるカードとして、海外で浸透

後払い方式のクレジットカードとは異なり、利用金額がその場で銀行の預金口座から引き落とされるデビットカード。入会金や年会費がかからないものが多いため気軽に発行・利用でき、使い込みの心配もないといったメリットがあります。

そんなデビットカードのルーツは、「小切手」です。20世紀後半のヨーロッパでは企業間だけでなく、個人間でも小切手を利用した商取引が一般化し始めていました。しかし、小切手には発行や郵送コストなどの課題があり、それらを解消できる決済手段としてデビットカードが台頭しました

その後、今日に至るまで海外ではデビットカードでの決済は広く浸透してきました。その背景には、海外のクレジットカードの発行審査が日本と比べて格段に厳しいという状況があります。一方、クレジットカードを発行できない人でも、審査の厳しくないデビットカードであれば発行できる可能性があることから、利用者数は拡大していきました。

そんな欧米諸国と比較して、国内のデビットカードの歴史は浅く、「J-Debit」という名称でデビットカードが登場したのは1999年のことです。その後、徐々に「J-Debit」による決済は増え、国内で年間約8,000億円の決済に使われるほど普及。しかし、2005年をピークにその決済金額は減少の一途をたどっています。

一方で、成長市場にあるのが「ブランドデビット」です。こちらは2000年代後半にインターネット専業銀行などがリリースして以来、発行枚数が増加し続けています。

次項では、そんなJ-Debitとブランドデビットの違いについて解説します。

「J-Debit」と「ブランドデビット」の違いとは

日本デビットカード推進協議会では、J-Debitを「金融機関で発行されたキャッシュカードが、買い物や食事代の支払いにそのまま利用できるサービスの名称」と定義しています。

一部の例外を除き、発行元となっている都市銀行や地方銀行のキャッシュカードは、そのままJ-Debitとして利用できます。そのため、日本の金融機関で銀行口座を開設した経験のある方は、ほぼすべてデビットカードを保有していることになります。

一方で、J-Debitでの決済金額が国内でむしろ減少傾向にある一因として、決済可能な店舗が限られていることが挙げられます。特に、コンビニやスーパーなどの小売店では、J-Debitの加盟店は非常に限られています。

これに対して、加盟店の豊富さをメリットに発行枚数を増やしているのがブランドデビットです。ブランドデビットとは、クレジットカードの国際ブランドが地方銀行やインターネット専業銀行などの金融機関と提携して発行するデビットカードを指します。

国内では、「VISA」、「JCB」、「銀聯」のブランドデビットが発行されており、一部年会費が必要なカードもありますが、その分国内外の加盟店で利用することができます。また、インターネットショッピングでも利用可能で、海外ATMから現地通貨を引き出すことができるといったメリットもあります。

このように「気軽に発行・利用できる」、「使い込みを防ぐ」といったデビットカード本来の特徴に、クレジットカードのメリットを合わせたブランドデビットは、衰退するJ-Debitの決済件数をはるかに凌ぎ、デビットカード市場全体を活性化しています。

デビットカード

ブランドデビット利用増加の背景には「電子マネー」?

上述したようなメリットを持つブランドデビットですが、決済件数の増加の一因として国内における電子マネーの普及を挙げることもできます。

SuicaやPASMOといった交通系電子マネー、楽天Edyやnanacoといった流通系電子マネーは、デビットカードよりもさらに気軽に発行することができるため、既に広く一般に普及しています。そのため、国内での年間決済金額は約6兆円とデビットカード全体の7倍以上の市場規模があります。

一方で、事前にチャージしておかなければ実店舗で決済できず、インターネットショッピングにも利用できないなど、デメリットも少なくありません。そして、このような電子マネーのデメリットを補完し、よりキャッシュレス市場を活性化させるための手段として金融機関が注目しているのがデビットカードです。

たとえば「SMBCデビット」など、キャッシュカードとデビットカード、そして電子マネーが一体となっているサービスもあり、各キャッシュレス決済サービスの垣根を超えてユーザーの利便性を高めようとする流れは、今後も広まっていきそうです

また、発行条件として18歳以上という年齢制限のあるクレジットカードとは異なり、デビットカードは15〜16歳から発行することができます。そのため、特に18歳未満の若年層に向けてデビットカードのプロモーションを行う金融機関も目立ちます。

たとえば、「VISAデビット」は、東京オリンピックでの活躍も期待される、サーファーの五十嵐カノア選手をCMに起用。サイト上でも、10代でもわかりやすいマンガでデビットカードのメリットを訴求するなど、若年層に向けた施策を展開しています。

キャッシュレス化の波が、決済の仕組みを変えていく

このように、国内ではクレジットカードの陰に隠れていたデビットカードは、電子マネーなどの新たなキャッシュレス手段の台頭によって、むしろ存在感を増しています

キャッシュレス推進協議会の資料「キャッシュレス・ロードマップ2019」(※)によれば、2016年時点のキャッシュレス決済金額のうち、約90%をクレジットカードでの利用が占めており、電子マネーやデビットカードが残りを分け合っている状況です。

しかし、今後、国内でさらに決済のキャッシュレス化が進めば、この比率が変動する可能性は高いでしょう。こうした変動に備え、消費者に限らず事業者も今のうちからキャッシュレス決済に馴染んでおくことが重要です。

(※)一般社団法人キャッシュレス推進協議会「キャッシュレス・ロードマップ2019」
https://www.paymentsjapan.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2019/04/Cashless_Roadmap_2019.pdf

 
モバイルオーダーご紹介

次の関連コラム:【美容室・サロン・整体院etc…】役務提供ビジネスでキャッシュレス決済を導入すべき5つの理由

前の関連コラム:【2019年最新】キャッシュレス決済の導入事例3選!