日本国内では海外と比較して現金主義が根強く残っていますが、ICカードやスマートフォンを利用した電子マネーによる決済も一般的になりました。とくに交通機関の乗降やコンビニなどの少額な支払いの際には、スムーズなキャッシュレス決済が多く用いられています。この様な背景もあり、ロイヤルホストやカウボーイ家族など、フードチェーンを展開するロイヤルホールディングスは都内にキャッシュレスレストランをオープンさせました。その将来像や市場からの反応はどのようなものなのでしょうか。

ロイヤルHDの挑戦

キャッシュレスレストラン

出典:https://www.royal-holdings.co.jp/gt-pantry/より

2017年11月1日、ロイヤルHDが都内にキャッシュレスレストランのオープンを発表。そして同月6日には、東京・日本橋に「GATHERING TABLE PANTRY(ギャザリング テーブル パントリー)馬喰町店」というイタリアンのお店をオープンさせました。入店後はタブレット端末に表示されるメニュー表からセルフオーダーし、会計時はレジではなくテーブルで電子決済します。決済システムは楽天ペイ。楽天EdyやiDなど主要電子マネー、クレジットカードなどが使用可能です。

GATHERING TABLE PANTRYでは人手不足解消とオペレーションコストの削減を狙い、セントラルキッチンの導入による厨房スタッフ削減、オーダーや支払いの自動化を進めました。さらに、Panasonicと共同開発したベテラン調理師のノウハウを取り入れた調理器具を使用。同時に、必要最低限の調理器具にすることで厨房スペースのコンパクト化し、席数確保に成功。小規模な店舗展開の可能性も視野に入れ、業務効率化と料理の質が担保できるようIT技術を活用したお店です。

「現金お断り」という店舗運営ですが、未来の働き方・飲食業界の改革として「実験店舗」の役割を担っています。ロイヤルHDでは、今回の店舗運営から得た結果をもとに、さらに改善を加えてグループ内の他店舗にも反映させたいとの考えです。

国内では賛否両論

現在の日本では、SuiCaやPASUMOなどの交通系ICカードやネット通販の普及に後押しされる形で電子決済が急速に浸透しています。しかしながらクレジットカードを除く電子マネーに限定した場合、未だに少額利用の割合が高く十分に普及しているとは言えません。この様な状況の中、完全にキャッシュレス決済となる店舗については否定的な声も多数上がっています。

日本国内でキャッシュレスが浸透しない原因としては、そもそも治安が良く、現金の持ち運びに不安を感じない点や、その状況とも関連して現金の信用度が高いと言う社会的な下地があります。また、小規模店を中心に、電子マネーやクレジット使用に対応していないケースとして、電子決済導入に掛かる費用が足かせとなっている実態も。

一方、日本政府はキャッシュレス化推進を目指した施策の打ち出しに力を入れています。とくにキャッシュレス決済が普及している中国を中心とする海外旅行客に対して、インバウンド需要は国内消費の強力なけん引力として働いており、今後キャッシュレス決済の需要やメリットは大きくなることが見込まれるでしょう。

ロイヤルHD以外もキャッシュレス進行中

社員食堂でのキャッシュレス

企業や大学では、社員証や学生証に電子決済システムを搭載し、食堂や購買に対応端末のシステムを導入するケースが増えています。プリペイド(前払い)式のカードにチャージしてセルフレジで決済する形です。多くの人数が同じ時間帯に殺到するため、電子決済の方が効率よく営業できるのでしょう。

「食べログPay」「ぐるなびPay」

大手グルメサイトも率先してキャッシュレス決済サービスを展開しています。

食べログPay

食べログでは、スマホに取り付けるタイプの決済端末を利用し、クレジットカード決済サービスを提供しています。既存のスマホに取り付けて、イヤホンジャックに接続するだけでカード決済が可能となる簡便なシステムです。
食べログペイ

出典:https://tabelog.com/tabelogpay/より

ぐるなびPay

ワイヤレスのハンディー端末によるクレジットカード決済サービス。簡易POSシステムも搭載しているため、予約や顧客管理が手軽に行えます。中国で大きなシェアを持つWeChatPayによる決済サービスに対応し、インバウンド需要にも対応できそうです。

いずれのサービスもクレジットカード手数料は抑え目。端末購入費用をキャッシュバックするキャンペーンにより初期投資を抑えられるようにしているなど、初めて電子決済システムを利用する事業者でも導入しやすいサービスモデルです。これまで電子決済に消極的であった小規模店への普及を狙っています。

その他、フードイベントなど集客が見込めて、スピードが求められる場でも電子マネー決済が進んでいます。

キャッシュレスでストレスフリー

今後の人口動態を考えると、人手不足はますます深刻化することが考えられます。ロイヤルHDが目指す新しい働き方の模索は既に喫緊の課題です。また、両替が不要となるのも電子マネーの特徴であり、インバウンド需要の取り込みを行うためには必須のサービスでしょう。今後も新たな消費動向の変化に素早く対応する為に、店舗経営の様々な面から必要とされると考えられ、マーケターとしてはぜひとも検討したいテーマです。

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