日本でも急速に浸透しつつあるキャッシュレス決済。一方で、キャッシュレス決済を導入している店舗において想定しておくべき事態があります。それが、自然災害によって起こる停電です。

今や日本では毎年のように大規模な自然災害が発生しており、キャッシュレス決済を導入している店舗では停電対策が欠かせません。そこで本コラムでは、現在どのような停電対策がとられているのかを紹介します

自然災害によって停電が起こると、キャッシュレス決済はどうなる?

日本は、自然災害の多い国です。地震や台風、大雨、大雪、洪水、土砂崩れなどが発生しやすく、内閣府の「平成22年度版防災白書」によれば、全世界の災害で受けた被害金額の11.9%を日本が占めています

そして、最近では災害による停電被害も深刻です。たとえば、震度7を観測した2018年9月の北海道胆振東部地震では、国内で初めてエリア全域が停電する「ブラックアウト」が発生しました。道内の約295万戸が停電し、2日間で約99%が復旧したものの、すべて解消するまで1カ月近くを要しています。さらに2019年9月の台風15号でも、大規模な停電被害が発生しています。千葉県では約90万戸が停電し、2週間以上復旧しなかった地域も多数ありました。

こうした自然災害による停電や、それに伴う通信障害は、生活だけでなく社会インフラに甚大な影響を与えます。電気とインターネット回線がなければ機能しないキャッシュレス決済も例外ではなく、QRコード決済、電子マネー、クレジットカードなどはすべて使えなくなってしまいます。さらに、銀行のATMも停止してしまうので現金の引き出しも困難になります

一方、最近ではATMが利用できない場合でも、現金引き出しを可能にするサービスとして「キャッシュアウトサービス」が話題を集めています。

レジをATM代わりにして現金を引き出せる「キャッシュアウトサービス」

キャッシュアウトサービスとは、店舗でデビットカードを提示し暗証番号を入力することで、レジ経由で現金を引き出すことができるサービスです。銀行法施行規則改正に伴う規制緩和を受け、日本電子決済推進機構が2018年4月にスタートさせました。

キャッシュアウトサービスの特徴として、ATM経由で現金を引き出す手間がなく、さらにATMよりも手数料が低いケースもあることが挙げられます。そのため、欧米では日常的に利用している人も少なくありません。

そしてキャッシュアウトサービスは、レジと暗証番号入力用のモバイル端末だけで稼働できます。そのため、停電時でも非常時電源などを活用することで、利用者の現金不足に対応することが可能です。また、デビットカードそのものに限らず、キャッシュカードのデビットカード機能にも対応しているため銀行口座を持つ多くの人が利用できます。

こうしたメリットから、キャッシュアウトサービスは災害時の現金不足を解消する方法として注目されています。しかし、災害の規模や停電・通信障害がどの程度の期間に及ぶかによって、店舗が用意する現金が不足してしまうリスクもあり、このサービスだけでは対応しきれないケースも想定されます。

【事例】セイコーマートにおける災害発生時の停電対策

災害時でもキャッシュレス決済対応を持続させようという取り組みを行っている企業もあります。そのうちの1社が、北海道内に約1,100店舗を展開するコンビニエンスストア最大手「セイコーマート」です。

セイコーマートは災害時対策に力を注いでおり、停電時の店舗におけるマニュアルも充実しています。従来、各店舗には非常用電源キットを用意し、停電の際には従業員の車を使って最低限の電源を確保することを決めていました。

また、近くに車を置けない場合やガソリンがない場合のため、電気や通信回線がなくても使える小型会計端末を全店舗に配布していました。このような対策が生きたのが、前出の2018年9月の北海道胆振東部地震です。多くの商業施設が休業する中で、実に95%以上の店舗が営業を続け、被災直後の道民の生活を支えました。

しかし、キャッシュレス決済に対応することはできませんでした。レジと発注用端末の電源は確保できたものの、キャッシュレス決済用のデータ通信機器や読み取り端末の電力を確保するまでには至らなかったからです。

こうした経験から、セイコーマートは対象機器を見直し、自動車の電源でレジとキャッシュレス決済のデータ通信機器、読み取り端末を同時につなげられるようにしました。配線などの整備を行い、2020年3月までに長期停電でもキャッシュレス決済が利用できるようにする予定です。

キャッシュレス決済

キャッシュレス決済導入の好機だからこそ、店舗ごとに対策を検討することが重要

東京オリンピック・パラリンピックの開催による訪日外国人対応、そして2019年10月の消費税率引き上げに伴う消費者還元事業の影響もあり、今後国内ではキャッシュレス決済の利用者数が急激に増加することが予測されます。

こうした国内事情から、店舗としてもキャッシュレス決済システムを導入する好機であると言えます。一方で、キャッシュレス決済の利用者や導入店舗が増えるほど、万が一の自然災害発生時には、混乱が大きくなる可能性があります。

そのため、本コラムで紹介したキャッシュアウトサービスや、キャッシュレス決済を利用できる環境を維持する電源確保策などを軸に、検討を進めていく必要があるでしょう

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