キャッシュレス・消費者還元事業がスタートし、国内においてもキャッシュレス決済の本格的な普及が目前に迫っています。

一方で、医療機関においては今なお現金決済が主流…。キャッシュレス決済に対応している医療機関は限られています。

そこで、本コラムでは国内の医療機関におけるキャッシュレス決済導入の現状をおさらいしたうえで、その導入メリットを解説していきます

医療機関におけるキャッシュレス化の実情

国内においては、医療機関のキャッシュレス化は他業界に比べて遅れています。2010年には、総務省から国立病院・国立大学病院などに対してクレジットカード対応の呼びかけがなされたため対応する医療機関が増えましたが、全体から見ればまだ少数派です。実際、経済産業省主導のもと産学官連携で設立されたキャッシュレス推進協議会によれば、医療機関のキャッシュレス決済普及率は約6%に過ぎません

その原因の1つとして、医療機関側のコスト負担が大きいことが挙げられます。保険診療は非課税で仕入税額控除ができず、医療機関にはただでさえ医薬品や医療機器、消耗品などの購入費に伴う消費税負担がのしかかっています。これに加えてキャッシュレス決済を導入すれば、さらにクレジットカードなどの決済手数料負担などの出費を計算しなければなりません。そのため、キャッシュレス決済の導入に二の足を踏む医療機関が少なくないのです。

一方で、このような状況に不便を感じている人が少なくないのも実情です。消費者庁が2018年6月に発表したアンケート調査によれば、「現金払いしか利用できずに困った店舗、場面がある」との回答は46.8%にのぼりました。しかも、その具体的な店舗・場面としてトップに挙げられたのが「病院・診療所」だったのです。

医療機関におけるキャッシュレス決済導入の5つのメリット

では、医療機関にとってキャッシュレス決済の導入にはどのようなメリットがあるのでしょうか?

メリット1:他機関との差別化

日本のキャッシュレス化は世界と比べて遅れていますが、政府は2025年までにキャッシュレス決済比率を40%とする目標を設定しており、今後利用者数が急速に伸びていくことが期待されます。日常生活で頻繁にキャッシュレス決済を利用する人たちが増えることも予想されるため、キャッシュレス決済の導入は他の医療機関との差別化につながるでしょう。

メリット2:患者の心理負担軽減

特に高額医療や自由診療を受ける患者にとっては、手持ちの現金で足りるかどうか心配する必要がなくなります。また、外来診療の場合は診療内容によって医療費が変わるケースが多いため、事前にどの程度の金額を用意すれば良いのかわからない患者の心理的な負担を軽減する効果もあります。

メリット3:会計待ち時間短縮

医療機関において、診療後の会計の待ち時間の長さは患者にとって大きなストレスとなりがちです。その点、キャッシュレス決済を導入すれば現金決済よりも短時間で会計を完了できます。

また、診察券を提示するだけで受診後に会計窓口へ行く必要がない後払いサービスも注目を集めています。クレジットカードや口座振替のほか、スマートフォンの料金と一括して支払うことのできる「auかんたん決済」「ソフトバンクまとめて支払い」に対応している医療機関も登場しています。

メリット4:訪日外国人対応

観光立国を目指す政府の方針や、2020年の東京オリンピック・パラリンピック、2025年の大阪・関西万博と大規模なイベントが予定されていることもあり、今後も訪日外国人数は増え続けることが予想されます。

日本の健康保険に加入していない訪日外国人が医療機関を受診する場合、その支払額は通常の患者と比べて大きくなりがちです。一方、キャッシュレス決済が一般化している訪日外国人の場合、手持ちの現金が少ない可能性もあり、未回収リスクが高まります。その点、キャッシュレス決済に対応していれば、そうした未回収リスクを軽減する効果も期待できます。

メリット5:業務効率化

メリット3で挙げたように、キャッシュレス決済の導入は会計待ち時間の短縮につながります。これは、裏を返せば会計業務を担う事務担当者が同じ時間でより多くの患者の会計をすませることができるということです。また、現金を扱う機会が減れば、釣銭間違いによるクレームへの対応やレジ締めなどを従来よりもスピーディーに完了できるようになるでしょう。そのため、キャッシュレス決済の導入は業務効率化につながる可能性もあります。

医療機関はキャッシュレス・消費者還元事業の対象外。今後の助成制度に期待したい

今回ご紹介したように、キャッシュレス決済の導入は医療機関においても様々なメリットを生み出します。

そして、2019年10月の消費税率引き上げに伴い、キャッシュレス・消費者還元事業がスタートしました。保険診療は非課税のため、医療機関はポイント還元の対象外ですが、キャッシュレス決済利用者の増加は、医療機関でも無視できません。多くの人々にとってキャッシュレス決済の利用が日常化すれば、医療機関でも対応が期待されることになるからです。

そして、今後はキャッシュレス決済比率のさらなる向上を目指して医療機関に対しても何らかの助成制度が設けられる可能性もあります。そうした状況に素早く対応できるようにするためにも、医療機関はキャッシュレス決済の動向をつぶさに注視すべきでしょう。

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