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UWB(超広帯域無線通信)とは?BluetoothやBeaconとの違いをご紹介!
UWBとは「Ultra Wide Band」の略で、超広帯域無線通信をさします。
数百MHzから数GHzという非常に広い周波数帯域を使用し、超光速通信、高精度の測距・測位が可能で、障害物による影響が少ないなど、多くの利点を持っています。
もともとは軍事用に研究が進められ、レーダーなどの技術に活用されてきましたが、2002年より軍事以外での利用が可能となりました。
米国連邦通信委員会(FCC)では、「10dB比帯域幅が中心周波数の20%以上」、または「500MHz以上の帯域幅を使用する無線通信」をUWBとして定義しています。
軍事用の技術をベースとしているため、民生用に開発された技術とは違う特性を持っています。
たとえば、UWBでは1nsの短い時間長のパルスを使い、対象物との正確な距離や形状も把握することができます。
これは対象をピンポイントで爆撃するときや、戦闘機同士の戦闘などに用いられてきた技術で、私達の身の回りでは自動車の衝突防止用のレーダーに活用されています。
UWBを使えば、GPSと比べてはるかに高い精度で位置を把握することができます。
その特徴から「壁を通して通信できる」「超高速で通信ができる」「周波数の規制を受けない」などといった噂が飛び交い、UWBは一時期たいへんな注目を集めました。
しかし「10mで100Mbps以上」という性能を必須条件として規格化が進められたものの、規格の制定が難航します。
また、他の無線LANの高速化の影響もあり、UWBはなかなか普及が進まず、UWBに対応した製品はそれほど多くありませんでした。
そんな鳴かず飛ばずの状況が続いていたUWBでしたが、2019年、Appleが発売した「iPhone 11」に搭載されたことで状況は一変、再び脚光を浴びます。
Appleは2020年に発売された「iPhone 12」のほか、iPad、Apple WatchにもUWBを採用し、位置情報サービスを活用しています。
また、その間に海外では屋外利用が解禁され、諸外国と比べて特にUWBの導入が遅れているとされる日本でも、2019年から一部帯域が屋外で使えるようになりました。
これにより、UWBは今後はさらに活用される機会が増えると予想されています。
UWBの特徴として、以下のものがあげられます。
超高速・大容量
広い周波数帯に拡散して通信を行うことで、伝送速度の高速化、通信の大容量化を実現しました。ただし、距離が長くなると極端に速度が低下します。
超高精度の測位・測距
位置検出の精度が高く、誤差は数センチメートル以内とされています。
この高精度の測位・測距を通信と同時に行えます。
周波数共用による他システムとの共存が可能
広く薄い帯域に拡散して通信をすることで、相手側に影響を与えず、こちら側も影響が受けにくくなります。この結果、他システムとの共用が可能となります。
UWBと似た機能を持つ近距離無線通信に「Bluetooth」があります。
現状ではBluetoothのほうがUWBよりも圧倒的に普及していますが、その最大の違いは測距精度にあります。
Bluetoothがメートル級程度であるのに対し、UWBはセンチメートル級の高精度の測距が可能です。
これまではBluetoothがスマートフォンに標準的に搭載される無線通信でしたが、UWBがiPhoneに搭載されたことにより、今後はBluetoothが担ってきた役割がUWBに置き換わっていくかもしれません。
UWBがiPhoneのU1チップに搭載!その特徴は?
到達距離が100~200メートルと長く、誤差がセンチメートルレベルという正確な測位を可能にしたUWBを搭載したことで、iPhoneは超広帯域通信に対応することになりました。
これにより、iPhoneは他のデバイスとの正確な位置関係を把握することが可能となりました。
この結果、「AirDrop」の使い勝手が向上することが予想されます。
UWBによって端末が向いている方向や、端末同士の距離がこれまでより正確にわかるため、より正確な通信が行えます。
この特徴を応用することにより、AR技術の向上も期待されています。
UWBの搭載でAirDropの性能は?変化を解説
「AirDrop」は、近くにあるほかのApple製のデバイスと、写真や動画といったデータの共有ができるサービスです。
このサービスにより、写真や動画、ファイルだけでなく、連絡先、位置情報といったさまざまなデータを、メールやアプリを使用することなく簡単にやり取りできます。
iPhoneにUWBが導入されることで、まず期待されたのがAirDropのアップグレードでした。
従来のAirDropは、多くの人が集まる場所では、対象者の指定がうまくできなかったり、時間がかかったりしていました。
UWBを利用すると、方向を検知して受信可能者リストの中からそのiPhoneを優先することが可能となるため、対象者を正確に指定することで処理スピードの向上につながります。
また、UWBを利用することで誰がデータを送ってきたのかを特定しやすくなるため、近年問題となっているAirDropの機能を悪用した「AirDrop痴漢」に対しても、一定の抑止になることが期待されています。
Appleから発売されたUWB搭載のAir Tagが便利!
Appleが2021年に発表した「AirTag」は、iPhoneに搭載される紛失防止タグです。
すでに同じような製品が数多く出回ってますが、AirTagには、これまで採用されてきたBluetoothに加え、高精度で測位できるUWBが採用されることになりました。
あらたなAirTagは、Bluetoothでだいたいの位置を把握し、UWBを使って細かな場所を探ります。
UWBを併用することによって、数センチという高い精度で探すことが可能となりました。
AppleのFiRa加入でUWBに与える影響
「FiRa Consortium(フィーラ・コンソーシアム)」は、UWBの技術の普及に取り組むアメリカの業界団体です。
AppleとGoogleがこの「FiRa Consortium」に加わったことで、UWBを活用しようとする動きがさらに加速しそうです。
iOS端末とAndroid端末の両方で、UWBが標準搭載される日も近いかもしれません。
UWBの普及により、将来的には家やクルマに近づくだけで鍵を解錠/施錠できたり、端末にスマートフォンやICカードをかざすことなく決済が可能になるなど、利便性が高まることが予想されます。
また、UWBを利用した防犯も期待されています。
今後は、スマートフォンの5G対応にともない、UWBも急速に普及すると考えられています。
これまで使われてきたWiFiやBluetooth、GPSといった技術は、UWBに置き換わっていく可能性があります。
かつて、Bluetoothはスマートフォンに標準搭載されたことで、市場が一気に成長しました。
UWBもスマートフォンに搭載されたことで、あらたなサービスや技術革新が生み出されていくことが期待されます。
UWBなどの無線通信を活用したシステムの開発には
UWBについて、ご説明させて頂きました。
UWBをはじめ、NFCやBluetoothなどの近距離無線技術を活用したアプリの開発には、精通したシステム開発会社に依頼をするのが安心です。Samuraiでは、システムの構想段階からの相談が可能で、ご要望に合わせた提案も可能です。ぜひお気軽にお問い合わせください。
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