インターネットの普及によりWeb上のオンラインストアを通じた販売形態「ECサイト」がシェアを伸ばしています。小売りやアパレル業界では、実店舗で商品を確認し、実際の購入は安いオンラインストアを利用するショールーミング化などの新たな課題も生まれましたが、現在では、実店舗とWebサイトの連携でユーザーの購買活動を促進させるオムニチャネル化で顧客獲得につなげています。
顧客接点が多様化する中、飲食店のあり方にもオムニチャネルの波が来ています。ここでは、「モノ」の販売だけではなく、「飲食店のサービス」にも広がった飲食店におけるオムニチャネルの成功事例をご紹介します。
ガスト
飲食チェーン店を多く展開する「すかいらーくグループ」運営のガストでは、2014年10月にガストアプリの提供を開始。ガストアプリでは、アプリ限定のクーポンの発行、GPS機能を用いた店舗検索、ポイント管理などが可能です。また、従来は来店者に頒布していたクーポンや広告の配信についても、アプリを通して一括したサービス提供を行うことで、ユーザー個人ごとの利用履歴を分析して、それぞれの行動に合わせた情報の配信やサービスの展開を行う事が出来る様になりました。顧客情報に基づいたマーケティングで顧客体験が向上し、売り上げを伸ばしています。
モスバーガー
モスバーガーもガストと同様に早くからアプリの導入を進めており、積極的にオムニチャネルの戦略を進めてきました。2014年のアプリ導入当初は、ネットを通じての注文サービスを開始し、どこからでも注文できて待ち時間なしで店頭で商品を受け取れるサービスを開始。その後は宅配サービスやモスバーガープリペイドカードなどを導入し、購買のための販売チャネルを広げて顧客の囲い込みによるリピーター増加効果を上げています。従来のテレビCMやチラシだけではなく、ユーザーが昼食を何にしようか考える11時頃にダイレクトメールやアプリによるプッシュ通知を行う事で、最少のアピールで最大の効果を引き出す事を狙っています。
飲食店向けおすすめアプリ
LINEデリマ
LINEデリマは国内最大のSNSサービスのLINEが展開する食品の宅配・出前サービスです。LINEはSNS機能にとどまらず、引用① 国内ユーザーが7000万人を超え/引用①、もはやインフラの一種となりつつあります。ゲームやオンラインストアなどさまざまなサービスの一環として、既存のウェブ出前サービスサイトである出前館と提携してサービスを開始しました。ユーザーはLINEデリマを通じて一元化した出前サービス情報を、無償で比較、入手可能となります。店舗側ではコストを抑えて多くのユーザーに対してリーチ出来る他、LINEデリマのアカウントから宣伝を行う事が可能です。
またLINEデリマでは新たな取り組として、シェアリングデリバリーサービスを始めています。このサービスでは、新聞配達店が店舗の代わりに配達するため、これまで人手不足などで出前市場に参入できなかった店舗でも新たに宅配サービスへの参入が可能となりました。
Uber Eats
LINEデリマと同様、料理の宅配サービスではありますが、国外のレストランでも使用できるグローバルなアプリです。北米やヨーロッパ、オーストラリア、アジアなどのレストランのメニューをデリバリーできます。また、Uber Eatsの魅力は有名店や人気店のレストランが登録されており、やや「おしゃれ」「高級感」のあるブランディングで顧客獲得につなげています。デリバリーのプラットフォームも、お店の雰囲気に合わせて選べれば、有利に働くでしょう。
出展:https://www.ubereats.com/stores/
ブッキングテーブル
2016年リクルートライフスタイルから発表された、飲食店の予約特化型アプリ「ブッキングテーブル」。位置情報を基に駅やエリア、料理のジャンルを設定し飲食店の検索と予約ができます。キープ機能があり、気になったお店を別枠でいつでも閲覧可能。お店のランキングに関しては、リクルートが運営する「じゃらん」や「ホットペッパーグルメ」での行動履歴や口コミ、PVなどのデータを合わせた独自のアルゴリズムで算出したものを使用しており、リクルートの強みを生かし口コミだけに左右されない予約に特化したサービスで、クーポン配信に特化した「ホットペッパーグルメ」と差別化を図っています。
公式:https://www.ubereats.com/stores/
「O2O」の手段でオムニチャネル化を目指す
現在ではウェブやメールを通じて顧客に情報をリーチさせた後は、宅配や実店舗などのさまざまなチャネルを用いて商品やサービスを届けるオムニチャネル化へと進化を続けています。スマートフォンアプリを用いる事で個々の購買情報の解析が可能となり、顧客ごとにカスタマイズした販促が行えます。これらの方法を適切に組み合わせれば、ライバル店との競争に勝つだけでなく、これまで見過ごしていたニーズを掘り起こし、購買行動の活性化も可能になるでしょう。