女性の魅力を引き立てるコスメ用品は、国内外のメーカーから非常に多くのブランド、商品が発売されています。使い方次第では強い味方になる反面、体質によっても合う合わないの個人差が大きく、自分に最適な商品を見つけることは難しいです。
この様に、個人による価値判断が複雑化しているコスメ業界では、O2O(オムニチャネル)を利用した販売戦略が活きています。購入までにプロセスを口コミやメイク動画などを駆使し、顧客の潜在的なニーズに対応したパーソナライズな販促戦略について事例をご紹介します。
パーソナルな価値が求められるコスメ業界
コスメ業界にはさまざまな特徴を持った商品がありますが、その中から自分にとって最適な商品を選ぶことは難しく、比較検討の材料として他者が投稿したリアルな口コミやレビューを参考にしている場合が多く見られます。
肌質や肌の色味、利用シーンや季節など、よりパーソナルな価値=商品・サービスが求められているなか、特定の個人に最適化した情報提供を行うためには、あらゆるアプローチ方法を組み合わせて活用するオムニチャネルによるマーケティングが有効です。それでは、個人価値が複雑化するコスメ業界ならではのオムニチャネルを見ていきましょう。
【事例①】資生堂のO2O戦略
大手化粧品メーカーの資生堂は、潜在層を顕在層にリードしていく段階的なサイト・サービス展開を行いました。
実店舗までの個人戦略
「Beauty & Co.」で潜在層を獲得
資生堂の運営するwebメディア「Beauty & Co」では、美容、ヘアスタイル、恋愛、メイクなど多くのカテゴリを設けて訪問者に幅広い情報を提供。女性のライフスタイルに関連するジャンルを広く網羅したサイト構成は、資生堂のイメージを押し出しておらず、美容やファッションに興味を持つユーザーが気軽に立ち寄りやすいよう敷居を低くしています。
「watashi+」でパーソナライズし顕在化
出典www.shiseido.co.jp/cms/onlineshop/campaign/c/beautyjournal/?_timeoutControl=1&device=c
資生堂の公式オンラインショップの「watashi+」では、資生堂の企業イメージのPRの他、よりパーソナライズされた価値提供を行っています。商品カタログを提示し、商品を直接購入できる他、ビューティーチェック(メイクのシミュレーション)を行い個人に合わせた提案を実施。「Beauty & Co」と比べると資生堂のPRを強めている他、美容診断を通したパーソナルチェックにより顧客の関心や期待値を引き上げ、web上での顧客体験向上につなげています。
実店舗でも購入させる
実店舗では、web上で興味を持った商品を手に取り、試してもらえる場を設置。美容部員の細かなアドバイスによる販促や、消費者の商品チェックの場として機能していた実店舗ですが、「Beauty & Co.」や「watashi+」で顧客の間口を広げ、より商品への理解や愛着を深めたうえでの購入につなげています。
【事例②】「@コスメ」送客支援サービス
日本最大の美容コスメサイト「@コスメ」
圧倒的な口コミ数で信頼のおかれる「@コスメ」は、送客支援サービスとして「@コスメお店ガイド」を発表しました。@コスメガイドでは、口コミ情報で見つかった商品の販売店をメーカーやブランドの垣根を越えてすぐに検索可能。加盟店は「@コスメお店ガイド」からキャンペーンやクーポンを配信でき、拡販戦略のプラットフォームとして活用可能。今後はコスメ商品にとどまらず、美容サロンの集客プラットフォームとしても機能する予定です。自社の強みを活かし、Be to Cに留まらずBe to Be系のサイトとしてオムニチャネルの効果を発揮しています。
【事例③】みんなのメイク
メイク動画で集客
2012年にスタイリングライフ・ホールディングスの立ち上げた動画投稿サイト「みんなのメイク」。現在は、@コスメを運営するアイスタイルがサービスを提供しています。
サービスの概要は「みんなのメイク」として、美意識の高い20~30代女性が「動ガール」としてメイク方法に関する動画を投稿。髪色別、一重、奥二重向けなど、かなり細分化されたニーズのメイク・美容関連の動画が投稿されており、複雑化した価値にコミットしています。
視聴者はコスメに強い関心を持っているため顕在層として購買意欲が高く、動画視聴後に実際に商品購入することもあるそう。他社とのタイアップやキャンペーンなど、販促活動も随時行っており、インバウンド需要を見越して、外国語への対応も進めています。動画コンテンツのため、ライブコマースの要素もある投稿サイトです。
今後も個人価値が細分化
情報を安価に受信・発信できる環境が整った今日では、流行ではなく個人の価値による消費行動が増加しいます。情報の入手経路も多岐にわたるため、従来のマーケティングは多くのルートの一つに過ぎず、その効果は相対的に小さくならざるをえません。マーケティング戦略を成功させるためには、多くの顧客情報の中から、年代、肌質、アクセスページなどを軸としてセグメントを分け、的確な販売チャネルや取り組みで売上を伸ばすことが必須でしょう。