事業再構築補助金とは?対象と条件

「事業再構築補助金」とは、新分野の展開や業態の転換、事業の再編といった、大きな事業再構築をしようとする中小企業や中堅企業、個人事業主を支援するための補助金のことです。
コロナ禍の影響で厳しい状況にある企業向けの補助制度として注目されています。

現在は第10回公募が2023年3月30日(木)から開始されており、公募期間は6月30日(金)18:00までとなります。

申請する条件は「売上の減少」「事業再構築への取り組み」「事業計画策定」の3つでしたが、第10回公募より「売上高の減少」が撤廃されました。

売上の減少

コロナ禍以降、売上が減少していることが条件となります。
具体的には、2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月間がコロナ以前(2019年または2020年1~3月)の3か月と比較して、
・合計売上高が10%以上減少している場合
・合計付加価値額が15%以上減少している場合

となります。

第10回公募から撤廃されました。

事業再構築への取り組み

申請する企業が事業再構築に取り組んでいる必要があります。

事業再構築の内容は、以下の5つに分類されます。
・新分野展開:新しい分野で市場に展開する
・事業転換:新しい製品・サービスで業種を転換せず主な事業内容を転換する
・業種転換:新しい製品・サービスで業種を転換する
・業態転換:製品・サービスの提供方法を変更する
・事業再編:組織の再編をして「新分野展開」「事業転換」「業種転換」「業態転換」のいずれかを行う

事業計画策定

政府が認定した支援機関と、事業再構築に関する事業活動の計画を策定することが条件です。
補助金額が3,000万円を超える場合には、金融機関を交えて事業計画を策定する必要があります。

事業再構築補助金の申請上限回数と金額

事業再構築補助金は、1事業者につき支援を受けることができる回数は1回のみです。ただし、申請が不採択となった場合は、再申請が可能となります。申請に通過するまで何度でも再申請できます。

また、後述する「グリーン成長枠」については、過去に支援を受けたことがある事業者も再度申請することが可能です。
採択された場合には支援を受けることができますが、支援を受けることができるのは2回を上限とされています。

補助金は1社当たり100万~1億円が給付され、補助率と上限金額は、企業の規模と応募枠によって変わります。

まず、企業の規模について確認しましょう。

中堅企業

大企業と中小企業の中間の規模で、資本金額がおおむね「1億円以上10億円未満」の企業。

中小企業

製造業・運輸業などでは資本金3億円以下または従業員数が300人以下、小売り業・サービス業などでは資本金5,000万円以下または従業員数50人以下、卸売業では資本金1億円以下または従業員100人以下の企業。

次に応募枠の種類を確認しましょう。

通常枠

新規事業展開や業態転換など規模拡大等を目指す中小企業等の挑戦を支援

大規模賃金引上枠

従業員を多く雇用しながら継続的な賃金引上をおこなっていてさらに従業員を増やして生産性を向上させようとしている中小企業等を支援

回復・再生応援枠

新型コロナウィルス感染拡大の影響により経営状況が厳しい事業者や事業再生に取り組む中小企業等を支援

最低賃金枠

最低賃金引き上げの影響により資金調達が難しい中小企業等を支援

グリーン成長枠

研究開発および技術開発、人材育成をおこないながらグリーン成長戦略の取り組みもおこなう中小企業等を支援

緊急対応枠

原油価格・物価高騰などの予期せぬ経済変化の影響をうけている中小企業等を支援

以上をもとに、補助率の一覧をみてみましょう。

応募枠中小企業中堅企業
通常枠2/31/2
大規模賃金引上額2/3 1/2
回復・再生応援枠3/4 2/3
最低賃金枠3/42/3
グリーン成長枠1/2 1/3
緊急対策枠3/42/3

補助金の上限金額は、従業員数と応募枠で決まります。

応募枠〜5人6〜20人21〜50人51〜100人101人〜
通常枠 2000万円2000万円4000万円6000万円8000万円
大規模賃金引上額なし なしなしなし1億円
回復・再生応援枠500万円1000万円1500万円1500万円1500万円
最低賃金枠500万円1000万円1500万円1500万円1500万円
グリーン成長枠中小企業 1億円中堅企業 1億5000万円
緊急対策枠1000万円2000万円3000万円4000万円4000万円

事業再構築補助金はシステム開発に利用すべき?

事業再構築補助金はさまざまなビジネスモデルが補助対象となっており、システム開発においても多く利用されています。

システム開発は、事業再構築補助金の審査項目に「先端的なデジタル技術の導入」があることからも、採択されやすい事業であるといえます。
ぜひ積極的に利用しましょう。

事業再構築補助金をシステム構築費として採択・成功した例

それでは、事業再構築補助金をシステム構築費として採択・成功した代表的な例をみていきましょう。

クラウドシステム開発

クラウドシステムとは、インターネット環境を活用したコンピューターシステムのこと。岩手県盛岡市を中心に食材の卸販売や飲食店の経営などを行う「クックサービス株式会社」では、コロナ禍でダメージを受けた店舗向けのクラウドシステムを開発・提供することで、事業の柱を構築することができました。

ECサイトの構築

近年では冷凍食品がブームとなっていますが、飲食業から冷凍食品の販売への展開はコロナ禍における事業環境に適応しており、料理の技術を活かせることで非常に有効な事業といえます。
北海道で飲食店を展開する「古艪帆来ほまれ物産株式会社」は、旬の食材を使った冷凍食品を販売するECサイトを構築し、新販路を開拓することに成功しました。

マッチングプラットフォームを開発

コロナ禍以降、オフラインでの接触が減少したこともあり、オンラインによるマッチングサイトやプラットフォームの需要が高まりました。
「株式会社KNOCK」は寄付サイトのプラットフォーム「HOPEN」を構築。SDGsに理解を示す企業や団体とインフルエンサーとのマッチングを行い、インフルエンサーの影響力を利用した情報拡散を行っています。

株式会社スタルジーのVRライブ配信プラットフォーム

最先端の技術を採用した企業の例を紹介します。ウェブマーケティングのコンサルティング事業をメイン事業としている東京都の株式会社スタルジーでは、事業再構築補助金を活用した新規事業としてVR(Virtual Reality)のライブ配信プラットフォームを構築しました。

約3,000万円ほどを開発費としてシステム開発ベンダーに開発を依頼し、その内の2/3である約2,000万円ほどを事業再構築補助金で補いました。

事業再構築補助金をシステム開発に利用するための申請の流れと必要書類

事業再構築補助金を利用するための手続きは、

  1. 応募申請
  2. 採択
  3. 交付申請
  4. 交付決定
  5. 監査
  6. 補助額確定
  7. 請求
  8. 入金

という流れになります。

それぞれの手続きの合間には、事業者の事業実施の状況を把握するための事業報告など、事務局とのやりとりが必要となります。

必要書類は複数あります。
まず、すべての申請者に必要となる書類として「交付申請書別紙1」「見積書・見積依頼書、業者選定理由書」「建物費、機械装置・システム構築費の追加書類」があります。

交付申請書別紙1

申請者や事業の概要について入力したもの。

見積書・見積依頼書、業者選定理由書

すべての補助対象経費についての見積書と見積依頼書を提出します。

建物費、機械装置・システム構築費の追加書類

建物費、機械装置・システム構築費を計上する場合の追加書類です。

次に、法人のみ必要となる書類です。

履歴事項全部証明書

法務局に登録されている会社の登記情報を証明する書類です。

決算書

直近の決算書です。

個人事業主に必要な書類もあります。

直近の確定申告書

個人事業主の場合は、直近2期分が必要となります。

青色申告書/白色申告書

青色申告をしている個人事業主は「損益計算書」、白色申告者は「収支内訳書」を提出します。

その他、該当する事業者のみ必要となる書類として「交付申請書別紙2」「海外旅費の詳細」「事前着手承認のお知らせメール」等があります。

申請の際の注意点!システム開発として認められない例

事業再構築補助金を活用してシステム開発を行う場合、注意しなければならない点があります。

自社開発の人件費は補助対象外となる

事業再構築補助金で行うシステム開発は、自社における人件費は認められません。
自社で開発する際の費用は補助対象外となりますので、外注を利用したり、機器や研修費などの他の経費を計上するなどの工夫をする必要があるでしょう。

外注のしすぎに注意

コンサルを利用するなど外注をうまく使うのは補助の対象となりますが、事業再構築補助金を活用して行う事業はあくまでも自社が主体となって行う必要があります。
事業の大半を外注するような場合は補助対象外となりますので、注意しましょう。

事業案はコンサルティングを受けるべき?プロの力を借りるメリット・デメリット

事業再構築補助金では、コンサルティングを含む認定支援機関のサポートが必須とされています。
事業再構築補助金におけるコンサルティングサービスは、補助金の活用支援と申請支援を行い、申請する経費に関するアドバイスや、事業計画書の作成など、さまざまな支援を行ってくれます。

コンサルティングを受けるメリットとして、以下があげられます。

採択率の向上

事業再構築補助金は、当然ながら申請すれば必ず受け取れるというものではありません。事業計画書に基づいて採択か不採択かが決定されますので、プロの力を借りることによって補助金の採択率の向上が期待できるでしょう。

負担の軽減

補助金の申請には、さまざまな書類の準備や事務局とのやりとりなど、煩雑な作業が伴います。
コンサルティングを利用すれば、申請や申請後に発生する手続きの負担を減らすことができ、新規事業に集中できるでしょう。

事業計画へのアドバイス

事業の計画自体にプロの知見でアドバイスをしてくれるので、事業計画をブラッシュアップすることにつながります。

デメリットとしては、以下が考えられます。

費用がかかる

プロに頼むことにより、当然ながら費用が発生します。採択後の補助金が受け取れる前に費用を支払う場合もありますので、資金繰り面でも注意しましょう。

コミュニケーションコストがかかる

コンサルティングに依頼することで、さまざまなサポートが受けられますが、その分コミュニケーションコストがかかります。それを負担に感じる方もいるでしょう。

事業案をコンサルティング会社に委託した際にかかる費用

コンサルティング会社に委託した際にかかる費用は、着手金が10〜30万円、成功報酬が補助金額の8〜15%というのがおおよその相場です。
費用にどのようなサービスが含まれているかによって変わりますし、上限金額や下限金額が設定される場合もありますので、確認が必要でしょう。

事業再構築補助金に関する相談はこちらへ

ここまで、事業再構築補助金についてみてきました。
申請はもちろん自身で行うこともできますが、採択率をあげるためには安心して任せられるコンサルティング会社を探すことをおすすめします。

本記事を執筆している株式会社Samuraiでは、申請のサポートからシステム開発まで、一気通貫で対応が可能です。システム開発での事業再構築補助金の申請を検討しているという方はまず一度ご相談ください。

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