一昔前は店頭での購入・接客が当たり前でしたが、マルチチャネルやクロスチャネルなどを経て、より顧客の行動が複雑化したオムニチャネル時代に突入。
店頭だけでなくECサイトやSNS、TVCMなどのさまざまな媒体やデバイスを活用すれば、効率よく販路を広げられ購買拡大に繋がります。店頭での購入がメインだったアパレルでは、とくにその戦略が求められている状況です。今回は、アパレル産業にフォーカスして、マーケティングを活性化させて売り上げを増やすオムニチャネルの取り組みを、成功事例から学んでいきましょう。
アパレルがオムニチャネルを意識するわけ
何故、企業にオムニチャネルという考え方や施策が必要なのか。それはネットの普及が進み、消費者が物を買う方法が大きく変化しているからです。一昔前は時間をかけてお店まで出向いていましたが、現代はスマホやタブレットを利用しネット上で商品情報を確認、選択、決済ができる時代。
加えてライフスタイルの選択肢や働き方の変化、物があふれていることもあり、消費者は、不特定多数に発信されるテレビコマーシャルなどを参考にするのではなく、ネット上に発信される特定の商品の口コミ情報を基準に購入を決定する方向にシフト。さらに顧客がフェイスブックやツイッターなどのSNSを使って個人の利用の範囲で情報を発信していくなど、情報の拡散スピードやパワーは、今後商品を売り出すことにおいて見過ごせない要素なため、現代に合わせた戦略の変更を余儀なくされています。
流動的なトレンドファッション、価格競争など変化の激しいアパレル業界では、時代の変化とともにEC化率が増え、実店舗とECサイトが連携したショールーミング、webルーミング前提のサービス。ポイント付与やキャンペーンなど、より顧客を呼び込むためのオムニチャネル施策が打たれています。
少子化が進む日本では、今後も内需の縮小が予想されます。生き残るためには、自社商品に対する販売チャネルの見直し。顧客データを収集し広告や集客などファンを増やすためのサービスに活かすことができるかどうかにかかっているといっても過言ではありません。既にオムニチャネルを取り入れている企業の成功事例を研究して、自らのマーケティング戦略を練っていきましょう。
ユナイテッドアローズ
出典:ユナイテッドアローズ公式通販 -UNITED ARROWS LTD.より
衣類やファッション小物のセレクトショップ、ユナイテッドアローズ。顧客管理としてカスタマージャーニーを把握するため、データ収集や分析を高速化するビジネスインテリジェンス・ツール(BI)とデータ可視化を専門とするアメリカのDomoのシステムを導入。あらゆる顧客データを統合し、商品開発や宣伝に活用。
着こなしの参考になるスタッフスタイリングの掲載や、ハウスカード会員とEC会員を統合したポイントの共通化でECシステムの利便性を高め、さらに顧客がスマホを使って在庫情報の検索や店舗での試着予約ができるアプリの提供を始めることで販売数を伸ばしています。
ナノユニバース
ナノユニバースでは、顧客体験を向上させるサービスの構築を優先し、顧客リレーションシップ管理を主軸したオムニチャネル戦略を展開。
実店舗とECサイトの連携を高めるためにメンバーズカードを廃止し、共通でサービスを受けられるオンラインからの入会に限定。会員はクラスわけされ、各クラスに応じたサービスや特典で顧客との関係をより深いものとしています。また、ブランドの世界観を再現するために実店舗の体型3Dスキャンなどを可能にした見やすさ、操作性に優れたアプリの提供でEC事業者としての価値を高めて、ユーザーを増やすことに成功。
CITERA
出典:CITERAより
ワニのワンポイントで知られる老舗アパレル・ヤマトインターナショナルでは、小売りの変化に対応して実店舗のないECサイトに特化したブラント「CITERA(シテラ)」を新規設立。
安易なセールや服のパターン増やすことはなく、コアなファンの拡大を狙うという老舗ならではのノウハウを生かし、ブランド力を高める方向性でWEBマーケティングに販路を広げています。サイト作りやSNS、メールマガジンといったネットならではのコミュニケーションや、ポップアップショップでのショールーミングなど、ECならではの顧客接点に力を入れたアプローチでファンを育成しています。
韓国アパレル
出典:DHOLICより
韓国アパレル企業は、小規模である自国の市場に対して限界を感じ、オンラインでの戦略で日本に進出。
「DHOLIC」を中心とした韓国のアパレルメーカーは日本人向けのアプローチとして、新商品の定期的な更新、日本人好みの色を使った服を優先的に掲載、認知向上のためのリアルイベントを行うことで流行を作り出し顧客数を伸ばすことに成功しています。顧客情報として日本人の市場を調査したうえでのマーケティングで、海外進出と市場拡大につながりました。
利便性=顧客満足につなげよう
小売における変化への対応は、分析方法、リソースの問題などあり、すぐ方向性を変更することは困難なことと思われます。しかし、顧客との接点が広がる販路拡大のチャンスでもあります。実店舗とECサイトの連携で利便性を高めることも大事ですが、それ以上に顧客満足度を上げる細かなアプローチはファンの囲い込みに重要です。ぜひ独自のオムニチャネル戦略でマーケティングの方法を見直して、集客や売上げの向上を目指しましょう。