電子決済や書類の電子化など、一日のなかで発生する行動や作業に対して、消費行動がスムーズになるようシステムの導入や改善がされています。
2018年は、実店舗での買い物で発生するレシートを電子化した「電子レシート(スマートレシート)」の実証実験が行われました。データ分析によるオムニチャネル販売で、さまざまなマーケティング手法が行われているなか、「電子レート」が新たなマーケティングツールとして期待されています。今回は、電子レシートの概要やメリットなどについてご紹介します。

経産省もプッシュ!電子レシートとは?

PCやスマートフォンやタブレットなど、携帯端末の普及に伴い企業内でのペーパーレス化が進んでいますが、小売の現場でも電子レシートによるペーパーレス化が試みられています。しかしながら、電子レシートの本来の目的はペーパーレス化ではなく、購買履歴のデータ化と蓄積にあります。

2018年2月には多数の店舗、企業が参加する大規模な実証事件が東京都町田市で実施されました。情報資産である「電子レシート」の活用メリットやサービス展開など、実店舗を構えている企業や事業者ではとくに注目しておきたい情報です。

電子レシートの導入で何が変わる?

お店のメリット

電子レシートの導入により紙レシートが無くなるため、ペーパーレスの効果として紙代と印刷費用の削減が可能。購入履歴データから行動や嗜好を分析でき、より消費者理解が深まった状態でクーポンやDMの配信、商品開発などが行えます。戦略次第では強力なコミュニケーションツールとして活用できるでしょう。

また、現在計画されている電子レシートデータの標準規格化により、自社だけでなく他小売店データも共有化できる様検討されている他、家計簿アプリと連携することで、顧客との接点を広げてサービス向上を狙うことができます。

生活者のメリット

まず、紙レシートが無くなるため、財布がレシートであふれると言った状態が避けられます。また、アプリでレシート情報を一括管理できるため、レシートの紛失や誤って捨ててしまうことも防げるでしょう。家計を管理する上での手間が少なくなり管理が容易となるほか、店舗からお得な情報やクーポン配信が期待できるなど、より満足のいく買い物に期待できます。
消費者にとっては管理の手間が減る程度に見えますが、日常的に発生することだからこそ改善が必要です。小さな改善がリピーターを増やすきっかけとなるでしょう。

経産省の具体的な実験事例

それでは、2月に行われた実験について、詳しくご紹介します。

東芝テック株式会社との連携実験(実験期間2/13~2/28)

※実験アプリより

経済産業省は、電子政府化推進策の一つとして電子レシートの促進と整備を挙げています。2018年2月13日~2月28日に行われた電子レシートの「社会インフラ実証実験」では、東京都町田市内にあるコンビニやスーパーでの購入履歴を一元管理し、店舗側は開示された情報をもとに販促に役立てられるかを検証しました。

電子レシートシステムの開発は、大手レジスターメーカーの東芝テックが行っており、店舗は、東急ハンズ、ミニストップなど町田市内の複数店舗。システムは、富士通やNTTデータCCS、スマホアプリとしてLINE、DNPなどさまざまな大手企業が参画しました。

電子レシートは、商品の購入時に専用アプリを立ち上げ、表示されたバーコードを読み取ることで発行されます。実験に参加する顧客は、小売店に開示する個人情報レベルを任意に変更できる様配慮されています。今回の実証実験は、規格を検討するためのβ版の試験となるため、実装される機能は少なめとなっています。
また、実証実験では利用者が「マスク処理」として、第三者に提供する情報開示レベルを設定できました。しかし、今後運用するには個人情報の扱いに関して細かなルール整備が必要となるので、大きな課題となりそうです。

電子レシートで日常を少し先進的に

利用した複数店舗での購入履歴を一括管理できれば、消費者にとって家計簿作成の手間が省ける他、購買行動の分析が行えます。また、店舗側が個人ごと趣味や嗜好に合わせてカスタマイズしたDMや情報配信を行い、今後はIoTデータと組み合わせたマーケティングにも利用できるでしょう。
実証実験の成果には大きな期待が集まりますが、顧客が開示する提供データに対しプライバシーの侵害や情報漏洩などリスクがあります。アプリやデータ保管など運用ルールについては今後の動向を見守りたいところです。