サブスクリプションは、ビジネスモデルとしてすっかり定着してきました。当初は、「年間購読」というその語源から、NetflixやHulu、Amazonプライムといった動画見放題・音楽聞き放題のサービスが主流でしたが、最近はかなり幅広いジャンルで活用されるようになってきています。
たとえば、シャープは2020年12月からECサイトで「マスク定期便サービス」を開始しました。サーバーダウンするほど人気を集めた「シャープのマスク」が、月額1,650円(送料無料)で入手できるサービスです。都度マスクを購入する手間が省けるほか、万一のマスク不足時にも安定供給が期待できるのがメリットでしょう。
同じようにコロナ禍に役立つサブスクとしては、無料で盗難補償することで話題となった置き配バッグ「OKIPPA」が展開する「玄関前プラットフォームOKIPPA」(月額270円・税抜)も注目です。こちらも2020年12月にスタート。非対面で荷物の受け渡しができる「OKIPPA」をお得に継続利用できるうえに、「おうち時間がより楽しくなるアイテム」をサブスクメンバー限定価格で提供する「OKIPPA BOX」では、レンタル式の最新調理機器と厳選食材で特別な食事を体験できるキットを用意しています。
このように、多彩なサービスが生まれてきているサブスク。本コラムでは、消費者のニーズが変化し、サービスが多様化した背景を解説し、最新事例を紹介していきます。
サブスクブームの背景とは?
なぜ今、サブスクが新たなブームとなってきているのでしょうか。最大の理由は、新型コロナウイルスの感染拡大にあります。外出を控え「巣ごもり需要」が爆発的に伸びたことに加え、デジタル化が一気に進みました。従来は、圧倒的に実店舗のほうが多かった消費者と企業との接点が、オンライン店舗やスマートフォンアプリへ移行したのです。
時代の変化も、大きな要素です。18世紀半ばに起こった産業革命以来、大量生産・大量消費・大量廃棄のリニア型経済モデルが浸透してきましたが、地球環境に与えるダメージもあり、近年は資源も廃棄も最小化する循環型経済(サーキュラー・エコノミー)が注目を集めています。
必然的に、モノに対する価値観も変わってきています。従来の「所有」で終わるのではなく、そのサービスによってどのような「価値体験」(CX、カスタマーエクスペリエンス)が得られるかが重要となってきます。前述した「シャープのマスク宅配便」や「OKIPPA」も、CXを意識したサービス設計になっていることは言うまでもないでしょう。単にお得なだけでなく、利用者がその価値を感じ続けられるサービスを提供することが、サブスクのキーポイントとなってきているのです。
あらゆるものがサブスクに!?最新事例を紹介
消費者が継続的に定額を払うサブスクは、収益を安定させる大きな武器となります。また、サービスを利用した顧客からの反応をダイレクトに収集できる仕組みづくりもできるため、よりニーズにフィットしたサービス開発にもつながります。
一方で、気に入られなければ契約を打ち切られてしまうため、魅力あるサービスを提供し続けなければなりません。では、どのようなサービス設計をすればいいのでしょうか。以下、最新の事例を4つ紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
事例1 最新製品を試せる!家電のサブスク~パナソニック~
パナソニックは、新たなECサイト「Panasonic Store Plus」を2020年12月にオープンしました。このECサイトは、新たな顧客体験価値の提供を目的としており、家電のサブスクサービスを始めたのが特徴です。
このサブスクは、「使ってみたいが使いこなせるか分からない」「購入したが使いこなせない」「効果があるのかまず試してみたい」といった声に対応したものとのこと。第1弾として、スチーマーと“温感かっさ”がセットとなった「スチーマー ナノケア定額利用サービス」(月額3,300円・税込)と「ペットカメラ定額利用サービス」(初月無料、月額1,430円・税込)の2つを始めています。
事例2 毎月異なる国産小麦のうどんが届く!~UDON LAB~
東京・大田区にある製麺所、丸山製麺がうどんライターの井上こんさんとコラボ。2020年11月から、毎月品種を変えたうどん2種類を届けるサブスクサービス「UDON LAB(うどんラボ)」(4食セット:月額3,000円、8食セット:月額4,200円)を始めました。
単に食品を届けるのではなく、小麦にフォーカスすることで「新しいうどんの愉しみ方」を提案するユニークなサブスク。20種類ある日本の小麦を単一品種で食べ比べられる機会はめったにないだけに、希少価値のある体験ができるといえます。しかも、毎月の2種類は「モチモチ感が強い品種と風味が濃い品種」「食感が力強い品種と上質な粘りがある品種」といった具合に提供され、おすすめレシピや小麦の育成者へのインタビューなどが掲載された「UDON LABレター」も同梱と、知的好奇心をくすぐる仕掛けが満載なのも魅力です。
事例3 コーヒー豆の定期契約でコーヒーマシン貸し出し~デロンギ・ジャパン~
開始わずか1週間で新規受付を一時停止するほど人気を集めたサブスクが、デロンギ・ジャパンの「ミーオ!デロンギ」です。同社の全自動コーヒーマシンはコーヒー好きにとても人気があります。しかし、当然のことながら“ちょっとお試し”の感覚で購入できる価格ではありません。ちなみに、このサブスクサービスで提供される「デロンギ マグニフィカS ECAM22112」は、同社ECサイトで54,780円(税込)で販売されています。
そこで、同社が生み出したのが、イタリアの老舗ロースターのコーヒー豆の定期契約をすることで、マシンを無料レンタルするというサービス。価格は毎月3袋(1袋250g)で月額4,500円(税・送料込)、2か月に1回6袋で7,800円(税・送料込)となっており、2年間契約すればコーヒーマシンはそのままプレゼントされるのです。つまり、2年間コーヒー豆を購入すれば実質的にマシンがもらえるというわけです。サブスクのシステムを活用して「モノ」を販売する好例といえるでしょう。
事例4 月額980円から電動自転車を!~イーチャリティ~
コロナ禍の今、ソーシャルディスタンスを保って移動できるツールとして、自転車が注目されています。とりわけ、スマートにパワーアシストしてくれる電動自転車は人気ですが、気高額なため気軽に購入できません。時間貸しのサービスはありますが、いちいち借りるのも手間がかかります。
そうした課題を解決するサブスクサービスが「イーチャリティ」(2020年12月スタート)。すべて新車でヤマハやパナソニック、ブリヂストンといった主要メーカーのものを揃えているにもかかわらず、月額980円からとリーズナブルです。半年ごとの定期点検や月2回までの出張修理費が無料となる「安心メンテナンスサービス」(月330円)や、盗難や事故を補償する「安心補償サービス」(月500円)など、万一に備えたオプションも用意されています。
サブスクを展開するのに必要な環境整備は?
実際にサブスクサービスを展開しようとするとき、どのような環境を整えればいいのでしょうか。
実店舗でチケットを配布する方式も考えられますが、コロナ禍が長期化してデジタルシフトが進んでいる現在、オンラインでサービスを提供するのが基本線となるでしょう。そうなると、スマートフォン用のネイティブアプリかWebサービスか、もしくはその両方を用意する必要があります。さらに、忘れてはならないのが決済システムの準備です。オンラインでのサービス提供であれば、キャッシュレス決済システムの導入は不可欠です。
しかし、アプリやWebサービスを最初から開発するのは大変です。費用だけでなく、時間もかなりかかるため、成果が出るのは数年後ということになりかねません。とりわけ、トラブルが許されない決済システムに関しては、精通した開発会社と取り組むことをおすすめします。Samuraiでは、セキュリティ対策も万全なキャッシュレス決済ソリューション「Samurai Order」のほか、ネイティブアプリやWebサービスを迅速にご用意することも可能ですので、サブスクサービスの開発を検討されている方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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